ファイバーレーザーカッターやフレキシブル生産セルの登場により、金属メーカーに成長機会が与えられています。 ただし、新たなプロセスや成長途中の工場にもたらされる需要の高まりによって、燃焼の発生率を上昇させる場合もあります。
金属工場は本質的に燃焼リスクの高い環境であるため、リスクの軽減を最優先する必要があります。 工場経営者は、これらの危険性を管理するために次の3つのポイントを知っておく必要があります。
可燃性粉塵の管理ガイダンスは、全米防火協会(NFPA)によって定められています。 この基準は業界のベストプラクティスとして、市、州、地方自治体の条例により義務付けられており、OSHAも検査時にこの規格を参照することが分かっています。 手始めに、次の3つの主要基準を確認すると良いでしょう。
NFPA規格652(2019年版)では、可燃性粉塵を生成または処理するすべての施設は、2020年9月7日までに粉塵危険分析(DHA)を完了しリスク軽減計画を策定することが義務付けられています。
粉塵危険分析の最初のステップは、施設で発生するあらゆる粉塵とヒュームを特定し、それらの燃焼リスクを判定することです。 判定には、ラボ試験が必要になる場合もあります。 すべての作業領域と、粉塵とヒュームの混合物を含む、存在するすべての粉塵を確認してください。 あるプロセスでは安定している金属でも、酸化や他の金属との混合により不安定になる可能性があります。
金属火災は消火が非常に難しい場合があるため、NFPA 484ではたとえば次のような具体的なガイダンスが定められています。
(NFPA484の表A.6.3.3 「可燃性金属消火剤クイックリファレンスチャート」を参照してください)。
火災や爆発のリスク管理戦略では、防止措置と保護措置の両方を考慮しなければなりません。 防止方法は発火の可能性を抑えるのに役立ちます。予防方法は火災や爆発が起こった場合に被害を抑えるためのものです。
次のような軽減策を、新規または既存の粉塵とヒュームの収集システムに複数組み込むことができます。 どのような組み合わせを選択するかは、リスク許容度、ダウンタイム時の懸念事項、リソースなどの要因によって異なります。
清掃 — NFPA 484では、少なくとも毎日、プロセスによってはさらに頻繁に、集塵機から金属粉塵を取り除くことが義務付けられています。 また、粉塵の蓄積を抑えるため、施設の表面の定期清掃を計画します。 目の届かないエリアも清掃するようにしてください。最初の爆発により隠れた粉塵が舞い上がり、より大きな二次災害を引き起こす恐れがあります。
集塵機の設置場所 — 可能な場合は、施設外部に粉塵・ヒューム用の集塵機を設置します。 NFPA規格は、一部の粉塵タイプについて外部設置を義務付けています。 屋外に設置することで、追加の軽減戦略を取ることができます。 たとえば、屋外集塵機の場合、適切に隔離されていれば、集塵機自体の燃焼を許容できる場合もあります。
専用設備 — 揮発性や反応性の金属粉塵を相互に隔離します。 複数の種類の金属を扱っている場合は、各プロセスに専用集塵機を設置することを検討します。 局所集塵機や局所ヒュームコレクターを設置することで、容易に実施できます。 必ず各専用集塵機にラベルを付け、適切な使用方法を従業員に指導してください。
スパーク制御 — スパークが集塵機の燃料源(粉塵)に到達するのを防ぎます。 潜在的なスパーク発生源と集塵機の間に距離(長いダクト)があれば十分な場合もありますが、 集塵システム内の気流速度が速いため(最大4,500 cfm)、この対策を有効にするには非常に長いダクトが必要になる場合もあります。 推奨される代替策は、受動スパークアレスターです。受動スパークアレスターは、乱気流を発生させて、スパークが集塵機に到達する前にダクト内で高速消滅させる装置です。
爆発ベント — 爆発により開口する特殊なパネルを集塵機に取り付け、 爆発物を専用の安全領域や「立入禁止区域」に排出させます。 機器制御盤をこの領域内に設置しないよう注意してください。
防爆装置 — 集塵機内の圧力上昇を感知し、抑制剤を作動させて燃焼を阻止します。 コストは高くなりますが、防爆装置は一次イベントだけでなく二次イベントを阻止する上でも非常に効果的です。
隔離 — 隔離装置は、集塵機に対する爆燃の影響を抑えるのに使用されます。 粉塵の種類と施設のレイアウトに応じて、さまざまな種類の隔離装置や戦略を利用できます。 金属関連の爆燃は、機器が反応する前に急速に拡大する可能性があるため、注意が必要です。装置の製造元に、用途に応じた適切な選定方法を問い合わせてください。
消火システム — 使用する金属やプロセスと相性の良い消火システムを選定します。 水ベースのシステムは、コストは低くても大がかりな事後清掃が必要になる場合があります。 二酸化炭素またはアルゴンベースのシステムは、迅速に回復できるかも知れませんが、コストも高くなる可能性があります。
可燃性金属を処理する製造施設は、そのリスクを理解し、適切な軽減策を策定する必要があります。 DHAプロセスを導入することで、金属工場は早い段階でリスクに対処し、燃焼が発生する可能性や影響を抑えることができます。 可燃性粉塵の種類、発生箇所、潜在リスクの軽減方法を把握することで、新たな成長機会をサポートするためのリスク軽減戦略を策定できます。