ディーゼル燃料には常に一定の割合の水が含まれています。 水のレベルを許容範囲内に保ち、飽和点をはるかに下回る状態にする必要があります。 燃料から余分な水を取り除くのは簡単ではありません。したがって、あらゆる合理的な対策を講じて水がタンクに入らないようにし、定期的に監視することが、最も効果的なアプローチになります。 そうすることで、水の除去を最小限に抑えることができます。 優れた水管理戦略を策定するには、含水量を測定し結果を評価する方法を理解することが重要です。
水は常に燃料システムのコンポーネントとインフラの錆と腐食を引き起こす原因となっています。 最新の燃料システムは、低圧システムよりもはるかに耐性が低いため、メーカーは現在、エンジンに到達する遊離水を0にするように指定しています。
水は燃料タンクとエンジン部品の両方に損傷を与えます。 タンク内の錆や腐食により生成された固形粒子は、燃料内を通過してエンジンの摩耗を引き起こします。 コンポーネントの寿命は、次のような水によるエッチング、侵食、キャビテーション、スポーリングによっても短くなります。
錆: 鉄や鋼の表面に接触した水は、酸化鉄(錆)を生成します。 燃料に入った錆の粒子は、他の固形粒子と同様に、部品に摩耗を引き起こします。 早期摩耗によって部品が故障する可能性があります。
腐食: 腐食は、インジェクターの問題の最も一般的な原因の1つです。 水は燃料中の酸と結合することによって、鉄類と非鉄金属の両方を腐食させます。 摩耗によって腐食しやすい新しい金属表面が露出し腐食しやすくなると、状態はさらに悪化します。 右に示すインジェクターは、新しく取り付けたものの、腐食が急速に進んだために300時間も経過しないうちに故障したものです。
摩耗: 水はディーゼルよりも粘度が低いため、可動部品が対向する表面間の潤滑「クッション」が少なくなり、 その結果、磨損が進んでしまいます。
エッチング: エッチングは、金属表面を「侵食する」硫化水素と硫酸を生成する水による燃料の劣化によって引き起こされます。
ピッティングとキャビテーション: ピッティングは、溶銑表面に遊離水がフラッシュすることで引き起こされます。 キャビテーションは、急激な高圧にさらされた時に、蒸気の泡が急激に凝結(破裂)して液体に戻ることで発生します。 これらの水滴は、小さな面積に大きな力で衝撃を与え、表面の疲労や浸食を引き起こします。
スポーリング: 水素脆化と圧力が原因で発生します。 金属表面の微細な亀裂に押し込まれた水が、 極圧下で分解し、水素を放出する「ミニ爆発」で亀裂を拡大して、摩耗粒子を生成します。
氷: 燃料中の遊離水が凍結すると、他の固形粒子と同じように作用する氷の結晶を生成します。 その結晶が燃料システムに摩耗を引き起こし、燃料フィルターを(大規模に)詰まらせる可能性があります。 燃料フィルターの仕事は、固形粒子を留めることによってエンジンを保護することです。 エンジンとフィルターでは、汚れと氷は区別されません。 氷はラボ検査が行われるずっと前に溶けて消えてしまうため、氷によって引き起こされた損傷を正しく診断するのは困難な場合があります。
水はまた、下記のような問題を多数発生させたり、悪化させたりすることがあります。
柔らかい固体: 水には極性があります。 添加剤に含まれる特定の化学物質にも極性があります。 炭化水素は無極性です。 つまり、水と極性化学物質は互いに引き付けられることになります。 遊離水があると、化学分子が添加剤の炭化水素鎖から解離し、水分子と結合して新しい物質を形成することがあります。 新しい物質は、燃料から沈殿する柔らかい固体であり、フィルターをすぐに詰まらせたり、エンジン堆積物を生成したりする可能性があります。 詳細については、添加剤の安定性を参照してください。
微生物の増殖: ほとんどの生物と同様に、細菌と菌類(カビ)が生存するためには食物と水の両方が必要になります。 遊離水が存在すると、微生物が増殖し、燃料を汚す粘液や、タンクや燃料システムを腐食させる酸が発生する可能性があります。
燃料の酸化: 遊離水は酸化プロセスを加速し、一般に燃料分解生成物として知られている酸、粘材、沈殿物の形成を促進します。
すべてのディーゼルには、一定割合の溶存水が含まれています。 水分子は、増え過ぎなければ燃料の一部のままです。 燃料が水を保持できなくなる限界は、飽和点と呼ばれます。 燃料中の水の量はppm(100万分の1)で測定されます。 水が溶存水として飽和点を下回っている限り、通常はそれほど問題にはなりませんが、 水がディーゼルから分離し、遊離水または乳化水になると重大な問題が発生します。 乳化水は別の形態の遊離水です。液滴は極めて小さく、燃料にしっかりと混合されているため、底にたまることはなく、浮遊したままになります。 水が燃料に完全に溶解している場合、「液滴」はありません。
水の侵入元はさまざまですが、制御が極めて難しいものもあります。
燃料の含水量を測定するにはいくつかの方法があります。 ラボで行われるものもあれば、現場で行われるものもありますが、 それぞれの試験で入手できる情報の違いを理解することが重要です。 おそらく、燃料タンク内の水をテストする最も一般的なのは、長いディップスティックに貼り付けられた特別なインジケーターを使用してタンクを「ディッピング」する方法です。 すばやく簡単に現場で行うことができ、タンクの底に遊離水があるかどうかを判別できます。
水モニター(センサー)はインラインに設置でき、信頼性の高いリアルタイムの結果を得ることができます。 このセンサーで燃料内の溶存水分量を測定すると、ディーゼルの相対湿度がパーセンテージで表示されます。 結果の最大値は100%です。これは、燃料が飽和点に達し、溶液中に水を保持できなくなっている状態を指します。 この試験方法では、タンク内の遊離水の量を測定することはできません。
カールフィッシャー滴定法は、1935年以来、流体サンプルの含水量を測定するために使用されているラボ試験です。 非常に正確で、少量のサンプルサイズですませることができ、 ディーゼル燃料中にある約50 ppmの少量の溶存水までも検出します。 飽和レベル(溶存水と遊離水)の上下両方の含水量を測定できます。 ラボで実施する際には、さまざまな条件下での燃料の水飽和レベルを判断するために使用できます。 通常、ラボ試験の精度は、フィールド試験のそれよりも高くなりますが、逆に精度がはるかに低くなる場合があります。 一体どういうことでしょうか。 ラボ試験の精度が低くなる理由は、タンクからサンプルが取り出されて、ラボで試験されるまでの間にサンプルそのものが変化する可能性があるためです。
ディーゼルには、寒冷時よりも温暖時の方が、飽和状態でより多くの水を保持するという特徴があります。 タンク内のディーゼルが冷えている場合、飽和点を超えている可能性があり、 その場合、機器に遊離水が入り、大きな問題を引き起こすことがあります。 これと同じサンプルをラボに送ると、タンク内にあった時の温度よりもラボにある時の温度が上がり、 燃料が温まって水が溶液に戻り、まったく問題がないと判断される可能性もあります。 氷の結晶でも、同じような診断の問題が発生する場合があります。 室温では「証拠」が消えてしまうということです。
水はまったく含まれないのが理想ですが、 実際にはほぼあり得ない状況です。 すべてのディーゼルには、一定割合の水が含まれています。 最も重要なことは、その水を飽和点未満に保ち、遊離水として機器に侵入させることなく、溶解したままの状態にしておくことです。 機器メーカーは、エンジンに到達する遊離水を0にするよう指定しています。 飽和点は、温度および石油系ディーゼル/バイオディーゼル比に基づいて、約50 ppmから1800 ppmまで変化します。 右のグラフからわかるように、バイオディーゼルは、同等の石油系ディーゼルよりもはるかに多くの水を飽和状態で保持できます。 ただし、バイオディーゼルと石油系ディーゼルを混合しても、数学的に比例した含水量にはなりません。 混合の場合、それぞれの合計よりも溶液中での保持量が少なくなります。つまり、2つを混合すると、遊離水が沈殿する可能性があるのです。
水を取り除く方法を理解するためには、まず水がどのようにして入り込むのかを理解する必要があります。 水の侵入元はさまざまですが、制御が極めて難しいものもあります。
サプライヤーからの供給時: ディーゼルは製油所を出る時は比較的クリーンで、含水量も少なくなっていますが、ディーゼルの供給時にはさまざまな量の水が混ざります。 サプライヤーから供給される時の水の量は、状況と取り扱い方法により大きく変わってきます。 では、自分たちで管理できることは何でしょうか? サプライヤーを替えたり、販売業者の負担となる契約を交渉したりする以外にも、次のようなことを試すことができます。
大気からの侵入: 空気と同じように、ディーゼルにも相対湿度があり、この2つは等しくなる傾向があります。 つまり、空気の湿度が燃料の湿度よりも高いと、燃料は空気から水分を吸収するのです。 ただし、空気が燃料よりも乾燥している場合は、両方の相対湿度が等しくなるまで水分が蒸発して空気中に戻ります。
遊離水の離脱: ディーゼルは、溶液中に一定量の水(溶存水)を保持します。 含水量が飽和点を超えると、余分な水分が遊離水として離脱します。 これは、総水分量が増えた時や、ディーゼルが冷えた時に発生します。 ディーゼルは、暖かい時は90 ppmの溶存水を保持できますが、気温が低下して冷えてくると60 ppmしか保持できなくなり、 この30 ppmの差分が遊離水として離脱し、タンクの底にたまります。
タンク内の結露: タンクの内側よりも外側の方が暖かいと、結露が発生し、この「水滴」が燃料に入ります。 この現象は繰り返し発生する可能性があり、毎回多くの遊離水が生成されます。
タンクへの漏れ: 雨、高圧洗浄、地下水はどれも、損傷したタンクやシール処理が不十分なタンクに侵入する水分のソースになる場合があります。 地下タンク(たとえば、ガソリンスタンド)には、地下に吸気口が設置されていることがありますが、 キャップの周囲に雨水がたまりやすくなります。 キャップを取り外す際、水位がキャップよりも上にあると、重力によって水がタンクに直接流れ込みます。
硫黄ディーゼルが500 ppmを超える地域では、ULSD(硫黄15 ppm未満)の地域よりも簡単に水分を除去できます。 たとえば、左側のフィルタースキッドは、南アフリカで使用するために設計されたものであり、高い効果を上げています。 コアレッサーと水分離器は、高硫黄燃料で非常に効果的に機能します。 これは、高硫黄ディーゼルでは必要となる添加剤がはるかに少なく、その結果、含まれる界面活性剤がはるかに少ないためです。
界面活性剤は、コアレッシング材/水の分離メディアを覆い、その性能を著しく損なう石鹸物質です。
ULSDの界面活性剤の量が増えると、コアレッシングメディアの機能が低下し、少なくとも、その有効性は疑わしいものになります。
メーカーは、現在の業界テスト規格に基づいてフィルター効率を公開しています。 現在の規格は数年前に作成され、一貫処理燃料を使用したラボ比較試験用に設計されています。 これは比較試験には適していますが、実際の条件下でのフィルター効率を必ずしも反映しているわけではありません。 規格では、ラボ試験用にULSD燃料を処理するには、すべての界面活性剤を除去することが義務付けられています。 現実世界では、界面活性剤を除去したULSD(別称:添加剤)はエンジンを破壊する可能性があります。 機器の使用に適したすべてのULSDには、添加剤と界面活性剤が含まれていることから、燃料そのものが効果的にコアレッシングフィルターの動作を停止させます。
したがって、コアレッサーの効率レベルの低下について言及した公開文書はおそらく見られませんが、文献には吸水剤についての言及が増えていることがわかります。 ULSDの使用地域に対して未だにコアレッサーを販売している企業は、コアレッサーの後に吸水剤を追加する必要性について言及しています。 遊離水が除去されたことを確認する方法は他にはありません。
残念ですが、大量の沈殿水を除去するにはタンクを排水する以外方法がないのです。 非常に簡単ですが、コストも手間もかかります。 タンクのヘッドスペースに供給され、ブリーザーから排出される乾燥空気(または窒素)のブランケットと優れた乾燥剤ブリーザーを組み合わせて使用することにより、周囲の湿気と結露がディーゼルに侵入するのを防ぐことができます。 前述したように、ディーゼルの相対湿度は、空気の相対湿度(または「乾燥」)と等しくなる傾向があります。 ディーゼル内の水分は、時間の経過とともに、ディーゼルが空気と同等のレベルに乾燥するまで空気へと戻されます。
優れた燃料水管理の鍵は、溶存水分量を最小限に抑え、すべての遊離水を排除することです。