研磨ブラスト加工またはブラスト仕上げ
ブラスト加工の手法は、用途に関係なく、基本的に湿式か乾式のいずれかになります。ここでは、乾式ブラストの粉塵管理に重点を置いて説明します。
湿式ブラスト
湿式ブラストは精密な仕上げ加工で、通常は、微細な研磨剤と化学処理水の混合液(スラリー)を使ったエアブラストを伴います。 適切な湿式ブラストでは、金属削れを起こすことなく、寸法公差を0.0001インチ以内に抑えることができます。 また歯の多いホブの研磨や、皮下注射針などの壊れやすい製品の仕上げも可能です。 湿式ブラスト装置はキャビネット式が一般的で、小さくて繊細なワークピースに適しています。
乾式ブラストやショットブラストの一般的な用途や機器には次のようなものがあります。
手動キャビネット、ロータリーバスケット、ロータリーテーブル、自動フィードブース、タンブラー、バレル、振動ユニット、ブラストルーム
原材料
- 乾式ブラスト用の研削材は、具体的なニーズによって施設ごとに異なり、同一施設内でも異なるものが使用されます。 メディアのサイズは20から6000メッシュと幅広く、捕集粒子のサイズはブラスト方法によって異なります。
- 集塵機を選定する際には、ブラストの対象物と研削材の双方の粒子を考慮する必要があります。 ブラスト対象物からの粉塵は、集塵機に収集される汚染物質の最大95%を占めるため、特定の用途の要件はブラスト対象物の発火性、爆発性、腐食性、毒性で決まる場合もあります。
ブラスト手法
集塵機の捕集条件は、乾式ブラストの手法によって決まります。 ブラスト手法には次のものがあります。
- 直圧式: 短時間で均一に仕上げることができ、精密なシステム制御が可能なため、大量の仕上げ作業用の機械に適しています。 大量のミルスケールやペイントの除去が可能で、届きにくい凹部、凹凸のある形状、大型ワーク、高速生産に対応できます。 結果的に、このブラスト方法では重い粒子捕集が発生します。
- 誘導(吸引): 軽度から中程度の生産、スペースに制限がある場合、予算的な条件がある場合などに使用します。 メディアの吸引要件により、ある程度圧力が失われるため、直圧式ほど効率的ではありません。 通常はキャビネット式のブラストユニット用のため、重い粒子捕集は発生しません。 ただし、複数のキャビネットから排気する場合、粒子捕集が大幅に増える場合があります。
- エアレスまたはブラストホイール: 厳しい生産要件で使用され、自動システムと最小限のヒューマンインターフェースが必要となります。 部品はメカニカルコニーによってブラストマシンに供給されるか、手動でマシンにロードされます。 研削材の使用量によっては、重い粒子捕集が発生する場合があります。
集塵方法
フードをブラストプロセスからできるだけ離しつつ、ブラストエリアからの汚染物質を適切に除去します。 捕集フードから一定の距離を保つことにはメリットが2つあります。
- 清潔または良好な研削材の集塵機への侵入を防ぐ
- 粉塵のみが捕集されるため、集塵機内の摩耗を抑えられる
以下のいずれかのタイプのインレットから集塵機に空気を供給します。 (研削材の研磨作用や表面改質作用は、ブラスト対象物だけでなく集塵機やフィルターエレメントに対しても働くことを考慮する必要があります)。
- 耐研磨性(A/R)インレット、
- ドロップアウトボックス、
- インレットの全寸法に合わせてテーパー加工したダクト
- 集塵機メディアの摩耗を抑えるオプションの検討
- 耐摩耗ライナーまたは
- サイクロンプレフィルター
集塵機に対する粉塵捕集は、集塵機の性能に大きな影響を与えます。 研削材の研磨性がそれほど高くない場合でも、量が多くなるとフィルターエレメントに致命的な影響を及ぼします。 また、集塵機に対する粉塵捕集を低減するため、インレットの条件も検討する必要があります。
ブラストプロセスの体積流量を決定するには、使用するブラスト装置、ブラスト加工する材料、研削材、顧客の具体的要件を確認する必要があります。 主な指標は、視界度、粉塵抑制、水平エアフロー速度です。
- 多くの場合、視界度の要件によって、一定の体積におけるシステムの空気交換の頻度が決まります。 これらの要件は、通常、ブラスト環境の視界度が落ちる時間と関連しています。 一般的な推奨値は、床または天井が60~100 cfm/ft2 、壁面空間が100 cfm/ftが2 です。 一般的なキャビネットブラストの場合、1分あたり20回の空気交換が推奨されています。
- 粉塵管理の要件は、キャビネットまたは自動ブラストのプロセスと関連しています。 空気量は、粉塵を筐体から逃がさないためにオープンエリアで必要な速度に基づき決定されます。 粉塵管理の要件は、キャビネットまたは自動ブラストのプロセスと関連しています。 空気量は、粉塵を筐体から逃がさないためにオープンエリアで必要な速度に基づき決定されます。 一般的なキャビネットの推奨値は、オープンエリアで500 fpmです。 回転テーブルの場合、開口部は200 cfm/ft2 とします。
- 水平エアフロー速度の要件はブラストルームと関連性があり、集塵機のサイズは一定の断面積における特定の速度に基づきます。 一般的な推奨値は、部屋全体とワークピースを通過し、作業員からは距離のある水平エアフローに対して100 cfm/ft2の壁です。 汚染物質の毒性、対象物や研削材、ブラストルームのサイズによっては、より低い制御速度が適用される場合もあります。
注意:
- ブラスト対象物に対し特別な配慮を払うことが大切です。 爆発性、引火性、腐食性、毒性のある研削材の場合、集塵機について事前に注意を払う必要があります。
- ほとんどの研削材は複数回使用され、1回のブラスト加工で消費されるのは5%~8%です。 同じ集塵機で互換性のない材料が混ざらないよう気をつけながら、各用途でブラスト処理する材料について検討します。
- 研削材は研磨性があるため、集塵機には摩耗防止対策を適用します。
- ブラスト対象物や研削材は種類がとても多く、ブラスト方法によっても違いがあるため、この記事ではすべての用途について取り上げることはしていません。
定義:
- 研削材 – 研磨ブラストに使用する物質。 研削材は、顧客要件に応じて、粒状、粉末、ペレット、破片などがあります。
- 研磨ブラスト – 空気圧、油圧、遠心力で研削材を表面に噴射すること。
- ブラストクリーニングバレル – 軸で回転する、または内部に可動トレッドのある一体型の筐体で、部品を振動させ、さまざまなタイプの部品表面にブラスト噴射を行います。
- ブラストクリーニングルーム – ブラスト加工を行うための閉じられた空間で、オペレーターはこの中でブラストノズルを操作し研削材を噴射します。
- ブラストキャビネット – オペレーターが外に立ち、筐体の(1つまたは複数の)開口部からブラストノズルを操作します。
- ロータリーブラストクリーニングテーブル – 研掃対象物を筐体内のロータリーテーブルに置き、一連のブラスト噴射を自動で行います。