ドナルドソントリット、地区マネージャー、Ted Henderson
集塵に関しては、搬送速度の重要性と、搬送速度がシステムの適切な設計に与える影響を理解することが不可欠です。 ダクト内の空気移動が遅すぎても速すぎても、同様に問題となる重大な結果を招きます。 最適な搬送速度は粉塵のタイプによって異なりますが、最適な空気量やそれに応じた速度の選択、維持を行うために採用できる設計手法や装置があります。
ACGIHの『工場換気マニュアル1』は、産業用換気の設計手法を決定するためのリソースとして業界で認知されているもので、搬送速度に関するガイダンスも含まれています。 一般に、粒子が重いほどダクト内の移動に必要な搬送速度が高くなります。 軽い粒子は低い搬送速度で移動できるため、運用コストを削減できます。
粒子の重さにかかわらず、ダクト内の空気に物質が蓄積しないようダクトを設計する必要があります。(図1)。
たとえば、鉛の粉塵は比較的重く、毎秒22.8メートル以上の搬送速度が必要である一方、溶接ヒュームは大幅に軽く、必要な搬送速度は毎秒10~12.6メートルです。 搬送速度が十分でないと、移動中の物質が落ちてダクトに蓄積する可能性があります。 ダクトに粉塵 が蓄積してしまうと、その負荷によってダクトやサポートが崩落する危険が生じたり、物質による可燃や腐食などの懸念も発生が発生したりします。
また、ダクト内に粉塵が蓄積することで、ダクト内の断面積も減少します。 つまり、狭くなった断面積内で設計値の空気量を移動させることになり、設計フローを維持するには速度を上げざるを得なくなります。 ファンの静電容量でこの問題を克服できる場合でも、加速によってダクトの摩耗が増加します。 通常、ファンにはそのような十分な静電容量は備わっていないため、総空気量が減少することでフードの捕集性能が低下し、システム性能全般が低下する結果になります。
粉塵のダクト内沈降を防止するのに十分な速度の維持が重要ですが、一方で、ダクト内速度が高すぎても問題が発生します。 研磨性粉塵はダクトの材質を摩耗させ、最終的に交換が必要になります。また、速度が高すぎると摩耗が加速します。 さらに、空気を高速で移動させるには、多くのエネルギーが必要です。 静電容量が大きなファンを購入すると初期コストが増加し、日常的な稼働におけるエネルギーコストも増大します。 したがって、設計空気量を正確に適切な搬送速度で移動させることは、システム設計において重要な留意事項となります。
搬送速度を制御する方法はいくつかありますが、まずは、初期の優れたダクト設計です。 ダクトの選択プロセスでは、設計空気量に基づいた適切な搬送速度を確保する必要があります。
実際の使用における課題の1つは、システムが常に理想的な設計エアフローで動作するとは限らないことです。 システム全体の空気量はかなり変化します。 たとえば、きれいなフィルターメディアにも最終的には粉塵が付着します。 汚染によりフィルター全体の抵抗が増加するとファンの送風量が減少し、ダクトシステムやフードを通過する風量が減少します。 この風量の減少は、通常、ファンの吐出しダンパーを開いて、フィルター上のダストケーキの蓄積による抵抗を相殺することで是正できます。 ただし、ダンパー方式は作業員が状況を監視する必要があります。 このアプローチの欠点は、粉塵の蓄積による抵抗がない新しいフィルターに交換した際、設計流量に戻すためにダンパーを閉じるのを忘れてしまうことです。 新しいフィルターを設置してシステムの風量は増加しているのにダンパーは完全に開いたまま、ということはよくあります。 このミスによりフードの風量が過剰になると、不要な物質まで捕集してしまうなどの問題が発生します。 ダクトシステムの摩耗率が増大するだけでなく、フィルター寿命が大幅に短くなり、頻繁な交換やメンテナンスが必要になります。
このシステムの設計風量を維持するためにエアフローコントローラーを使用します。 (図2) エアフローコントローラーは集塵機手前でダクトシステム内の静圧をモニタリングし、継続的にファンの可変周波数ドライブにフィードバックを送信し、ファンの回転速度を調整します。 このようにファンの回転速度を調整することによってダクトシステム全体の風量が一定に保たれます。また、風量とダクト内風速は比例するため、ダクト内の搬送速度が安定し、システムが常時設計したとおりの条件で動作することで、効果的な集塵を実現します。
集塵ダクトシステムの搬送速度を理解することは不可欠です。 搬送速度が遅すぎたり速すぎたりすると、粉塵が沈降してダクトが過度に摩耗するなどの悪影響を与えます。システム内の空気量を最適化し、適正な搬送速度を確保することで経済的なメリットが得られます。 システムのファンにかける資本コストを節約でき、最適な搬送速度で稼働させることでファンの運用コストを恒常的に削減できます。 ダクトの摩耗やダクト内の粉塵沈降に関連する問題も軽減されるため、さらなるコスト削減を実現できます。
1 Industrial Ventilation: A Manual of Recommended Practice for Design (28th ed.) (2013). Amer Conf of Governmental.