化学処理施設の所有者や管理者は、生産需要とリスク管理のバランスを常に取っています。 可燃性粉塵は管理リスクの1つです。 リスク軽減計画は、さまざまな業界の複数の当局によって定められた規格や法律を満たす必要があります。
全米防火協会(NFPA)は、化学処理における可燃性粉塵の管理に関するガイダンスを定めています。 2019年版のNFPA 652の「可燃性粉塵の基礎に関する規格」は、可燃性粉塵の取り扱い、処理、または生成を行う製造業者に対し、2020年9月7日までに粉塵危険分析(DHA)を完了することを義務付けています。 多くの州や自治体は、NFPA規格を条例に組み込んでいます。またOSHAは、労働環境検査の際にNFPA規格を参照しています。
DHA評価では、プロセス固有の可燃性粉塵のリスクを特定し、燃焼の発生率と影響を最小限に抑えるように努めます。 どの施設にも適用できるような万能の戦略はありませんが、主に次のような点を確認すれば、事業独自の軽減戦略を策定するためのリスク評価やリスク判定に着手しやすくなるでしょう。
まず、粉塵の特徴を特定します。 公開データを利用できる場合もありますが、そうでない場合は、代表的なサンプルを認定された粉塵テストラボに送ります。 テストでは、粉塵が可燃性(堆積状態や層状態で発火する可能性がある)や爆発性(雲状態で発火する可能性がある)のものかどうかを確認したり、燃焼の潜在的な速度と力を判断したりすることもできます。
毒性、反応性、腐食性、不安定性など、粉塵のその他の特性も燃焼リスクを軽減する上で重要な要素になる場合があります。 たとえば、反応性の高い材料は、個別の集塵システムを使って分離しなければならない場合もあります。 考慮すべきもう1つの問題として、集塵機そのものの材料も挙げられます。 特定の材料を必要とする場合もあれば、避けなければならない場合もあります。 軽減設備を推奨したり設置したりする際は、それらを組み込む設備サプライヤーに、このような懸念を伝えるようにしましょう。
マテリアルハンドリング、混合、融合、輸送、包装などの活動はどれも、厄介な粉塵が発生する原因になり得ます。 さらに、照明器具、パイプ、桁など目につきにくい場所の表面にも粉塵がたまる可能性はあります。 この目につかない粉塵も危険要因になる可能性があります。最初の爆発によって空中に浮遊し、より深刻な二次爆発を引き起こす恐れがあるためです。 検査官は1/32インチより厚い粉塵は危険と見なすため、定期的に清掃を行うことが重要です。
燃焼を回避するための鍵は、その構成要素である 燃料、発火源、酸素を分離することです。 化学処理には、潜在的な発火源が集塵機に侵入するのを抑える方法が複数あります。
ダクトを長くする — スパークの発生箇所と蓄積された燃料(集塵機)の間の距離を大きくすると、スパークは可燃性粉塵に到達する前に消滅する可能性があります。 このソリューションは、コストを低く抑えられるかも知れませんが、ダクトが長くなると、エネルギー使用量が増えたり、場所を多く取ったりする可能性もあります。
パッシブ軽減装置 — ダクト内に乱気流を作り出す装置は、スパークの消火速度を上げる可能性があります。 この方法はそれほどコストがかからず、圧力損失も低く抑えることができます。 考慮すべき問題として、ダクトの長さの要件や、特定の種類の粉塵が付着する可能性が挙げられます。
アクティブ軽減装置 — 能動的な軽減装置は、ダクト内のスパークを検出し、消火剤で消火します。 これらのシステムは高い検出力と反応性を備えていますが、複雑でメンテナンスの必要性も高いため、コストが高くなります。
予防する手順だけですべてのリスクを排除することはできないため、保護戦略も必要になります。 防火システムと防爆システムの両方を検討する必要があることと、通常はそれぞれ別に装置が必要になることに留意しましょう。 利用可能な保護方法を以下にいくつか挙げます。
スプリンクラー — スプリンクラーシステムは温度変化に反応し、集塵機に水を噴霧します。 スプリンクラーには初期費用はそれほどかかりませんが、システムが作動した場合、事後清掃にかなりの時間が必要になる場合があります。
化学消火器 — 二酸化炭素やその他の消火剤を集塵機内に放出し、消火します。 初期費用はスプリンクラーよりも高くなりますが、事後清掃は楽になる可能性があります。また、薬剤防火システムは集塵機専用なので、集塵機と一緒に簡単に移動できます。
爆発ベント — 爆燃が起こると開口し、ガス、炎、破片などを意図した方向に放出させる弱いパネルを集塵機に取り付けることができます。 この方法は比較的安価ですが、排出エリアで二次火災が発生する恐れがあるほか、イベント後のダウンタイムが長引く場合があります。
受動的隔離 — 受動隔離装置は、爆発の圧力波によって作動し、爆発を集塵機に隔離するように設計されています。 この方法は機器のセットアップは簡単ですが、粉塵の特性によって用途が限定される可能性があります。
能動的隔離 — 能動隔離装置はセンサーを使用し、爆発前の圧力上昇を検出して、爆発がダクトを逆流するのを防ぎます。 能動分離システムは正確な検出力を備えていますが、装置は高額でシステム制御も必要です。
屋外 — この戦略では、立入禁止区域で囲んだ屋外区域に集塵機を配置し、燃焼をプラント資産から分離します。
リスク軽減計画は反復的なプロセスです。 材料やプロセスを変更する度に、施設のリスクを見直す必要があります。 変更を加えていない場合でも、NFPA規格は、少なくとも5年に1回、念のためDHA評価を行うよう定めています。 粉塵危険性評価を定期的に行っていれば、細かな変更によって生じるリスクにも対応できます。